魔族の王子の進む道 〜俺様王子が魔王になるまで〜

「もう良い!! 」

 彼はとうとう痺れを切らし、跪かされている角娘に近づき、見下しながら言った。

「なぜ連れてこられたか…⋯まあ、頭の悪い低魔族のお前では分かるまい」

「あたし、王子様の『おあいて』をするように、って言われました! 」

 その娘の言葉に周りはざわつき、当の王子の片眉は上がる。

「ギダ様が、あたしを心配して泣きながら見送ってくれました! だからちゃんと言ってきたんです、ちゃんと頑張ります、って! 」

 『ギダ』というのは、とても小さい集落である小角族の族長の名。

 無理もない。
 本気で怒らせれば何をするか分からないと言われている王子に、家族同然の娘を差し出す羽目になったのだから。

 にも関わらず、娘はまだ絶やさず笑っている。

「王子様に従いなさい、って! あたし頑張りますっ! 」

 娘は胸を張りそう答えたのだった。