魔族の王子の進む道 〜俺様王子が魔王になるまで〜

「これはこれは恐れ入ります……! もっと出せるという方、居られますでしょうか!? 」

「ん〜……え?? 」

 ゼラが気づくと、自分は照明の当たる広い舞台の上にいた。

 腕は壁に掛かった魔力の鎖で繋がれ、母親手作りの愛用の服の代わりに薄手の、露出の高い飾り付きの衣装に。
 目の前には仮面を付けた魔族たちが席に並び、札を上げ合っている。

 気を失う前、腕を繋がれ直した瞬間にゾッとした。男のどす黒く、淀んだ感情が感じられたからだった。

 王子の時とは違う、地の底に落とされそうな闇のような感情、気味の悪い笑み……

「王子に献上されたにも関わらず即刻捨てられた、哀れな小角族の娘です!! 明るく、ハツラツとした丈夫な身体、純真無垢な心! 穢して楽しむも良し、命尽きるまでこき使い続けるも良し! 最高の奴隷として貴方様のお側に置けますこと、間違いないでしょう!! 」

 いつもは呑気なゼラも、今回ばかりはとても嫌な予感がした。

「助けてぇ!! 誰か……! 」

 ニヤ付いた魔族達は品定めするようにゼラを眺め、誰として手を貸そうとはしない。


 その時、舞台に男が突然スッと現れた。

「お、お客様!! 奴隷に触れてはいけません、大切な商品ですから……」

 主催の男や会場の者たちが慌てる中、赤い衣装に仮面を付けたその男は鋭い眼光で周りを見渡すと、周りの者たちはその雰囲気に怯み後退る。

 その男はそのまま娘にそっと近づいた。

「う……」

 娘は反射的に動かない身体で身構えたが、男は娘の頬に優しく触れる。

「確かに良さそうな娘だ、頭はあまり良くないようだがな。……主催の者だな? 本当にこの娘を、王子はすぐに捨てたというのか?」

 進行役の男は、突然現れた男に怯えながらも答えた。

「は、はい……この娘をすぐに追い出したと聞いています……」