魔族の王子の進む道 〜俺様王子が魔王になるまで〜

 一角獣の牽く馬車は街の外れの、周りが霧深い屋敷の前に止まる。

「よし、娘を連れて出ろ」

 娘は男達に乱暴に車から引きずり降ろされた。

「っ……貴族様ぁ、痛いです」

「娘に傷を付けるな。大事な“商品”だからな」

「“商品”?? お医者様の所に行く前に、どこかのお店のお手伝いをすればいいんですか? 」

 娘が呑気にそう聞くと、男はほくそ笑んだ。

「くくく……本当に馬鹿な娘だ。まだ分からないのか……」


 ゼラは屋敷に入れられると、あっという間に手を縛られた。

「痛っ……!! 」

「すぐに風呂の用意だ、衣装は準備出来ているか? 急いで済ますぞ!! 」

「や、やですっ……やだぁ!! 」

 男は壁に繋がれたまま泣き叫び足をバタつかせるゼラを、呆れながら見つめる。

「ったく、元気の良いガキだ! まあ、そんなガキを高値で奴隷として買いたいって“高魔族さま方”の要望があるから、こうして俺達が集めてやってるんだけどな。……それにしてもまだ小角族に、奴隷としてご希望に添う歳頃のガキが残っていたとは。コイツを見つけて王子に献上した俺に、感謝してほしいくらいだ」

 巻角の男はさらにため息混じりに愚痴る。

「……元気なのは良いが風呂前には面倒だ、眠らせておくか。おい、風呂手伝いの女たちはまだか!? 」

 男が自身の巻かれた角を撫でると、ゼラはそのまま意識を失った。