「兵士様も、何か辛いことがあるんですか?? 王子様と一緒にいたときと同じ感じがしたから……」

「何……? 」

 自分を感じた娘の感覚とはどのようなものだったのか、自分ではどんなに考えても分からないものだった。

「兵士様、小角族の魔力は高くはありません。しかし皆、一つでも秀でた能力があるのです。ゼラは手で触れた相手の、マイナスの感情を感じることが出来るらしいのです。さあどうぞ兵士様」

 族長は彼にそう説明し、自身のそばの席を勧めた。

「……そうか、城で娘に触れたからか」

「貴方様に何があったか、ワシには存じ上げません。ですが、ゼラはこの一族自慢の優しい娘。ゼラがそう言うのだから、よほどお辛いことがあったのでしょう。この村でゆっくり過ごされ、少しでも癒やされますよう……」

「……。」

 自分が辛いと思ったことなど、それはたった一つだけ。そう、そのはず…

「兵士様〜、元気出してくださいね! コレとコレとコレ、どうぞ〜。サイのおいちゃんも、こっちに来て〜!! 」

 娘はニコニコと笑い、サイクロプスとともに、彼のもとに何皿も料理を取り分けて持ってきた。