「……。」

 娘は泣いている子供らに優しく笑う。

「王子様は優しいから、そんなことしないよ? それにギダ様が、王子様は本当は優しいんだ、って言ってたでしょう? 王子様はあたしを帰してくれたよ、それでちゃんとあたしは帰ってきたんだから! もう泣かないのっ」

 確かに娘は帰ってきたが、王子である自分は娘の命の源でもある角を強く絞めあげ傷つけてしまった。
 娘はそれを誰にも言っていない。

 それでも娘は変わらず“王子は優しい”と言い、事実、王子の為にと危険な森へ弟王子を探しに行っている。

「……こんな娘でも、私のした事を忘れたはずは無い」

 娘は変わらず笑って子供らの頭を撫でている。

「大丈夫。王子様だって弟の王子様が見つかったらきっと、元気になってくれるから! 」

 娘の明るい言葉に、子供らは泣きながら頷いた。

 そして、近くにいた彼にようやく気付いたらしい。

「……へいしさまぁ?? 」

「兵士様だぁ……!! 」

 娘は誇らしげに子供らに言った。

「この兵士様はねぇ、あたしを助けてくれたのっ! 」