魔族の王子の進む道 〜俺様王子が魔王になるまで〜

「どうしたの、そんなに泣いて?? 」

 娘は皆を抱きしめながら聞いた。

「っく……だって、まきづののおじさんがっ……」

「っ……ゼラ姉ちゃはもうかえってこない、っていったんだぁ!! 」

 娘は首を傾げる。

「あたしが帰ってこない、なんて、誰が言ったの? 」

「巻角族のおじさんだよ! ゼラ姉ちゃんを王子様のとこにやったらいい、って言った……」

「あぁ、あの貴族様? なんでそんなこと言ったんだろう?? 」

 巻角族は、低魔族で魔力は低いがずる賢く、商売が上手い者が多いといわれている。

「……貴族だと? どうせ名声に逆上せた成り上がりの者だ。そのような輩、品があるわけが無い」

 彼はすぐに察した。

 人当たりが穏やかで頭のあまり良くない小角族のこと、巻角族の者達に上手く言いくるめられ、この娘を自分に差し出す羽目になったのだろうと。

「っ……おじさんが、弟王子様が見つからなくて怒った王子様が姉ちゃんを死ぬまで痛めつけて閉じ込めるだろう、って言ってたんだ! 」

「わぁぁん! ねえちゃんは、もうかえってこないって、いわれたんだ〜!! 」

 まさに娘に対して自分がしようとしたことを言い当てられ、彼は何も言えずに黙り込む。