「兵士様、王子様もきっと分かって下さるはずです! 危険を犯し、娘をあの恐ろしい森の中まで助けに行って下さったのですから……お努めも気がかりでしょうが、兵士様、どうかお願い致します!! 」

「……。」

 族長の強い願い出と、王子である彼のせいとも露知らず無邪気に笑う娘。

 内密で来た手前、正体を明かすわけにもいかず彼は内心頭を抱える。
 しかしすでに小角族達と荷台を引いたサイクロプスは、宴の準備に取り掛かり始めていた。

「兵士様、行きましょう〜!! 」

 魔力は戻っても疲れをまだ完全に補える程の体力は無く、このまま帰っても城の者たちにくたびれた姿を見せることになる。

「……脳天気な低魔族どもは」

 彼はまたため息をつき、娘と共に蒼い月の昇る頃まで待つ羽目になった。


 娘と歩いていると、彼女よりも小さな小角族の子供が何匹か走り寄ってきた。

「ゼラ姉!! 」
「姉ちゃだぁ!! 」
「よかった、おかえりなさい〜!! 」

「みんなぁ! ただいまっ!! 」

 娘は満面の笑みで子供らを迎えるが、子供らは一匹残らず揃って泣いている。