魔族の王子の進む道 〜俺様王子が魔王になるまで〜

「ギダ、ゼラ居タ! 」

 彼の言葉も聞かずに巨人は、前方に見つけた誰かに向かって声を掛けている。

「ギダ……? 小角族の長ではないか! 」

 城の者たちには口止めし、いま自分は兵士姿。

 内密である上、正体を知られては普通ならば王家への反乱は避けられないかもしれない。
 怒りの衝動に駆られたとはいえ、腹いせのために一族の娘を無理やり城へ出させたのだから。

「サイ、連れて来てくれたのだな!? ゼラ!! おぉ、ゼラ……良く無事で!! 」

 そう言いながら族長が、早く娘の無事を確かめようと走り寄ってくるのが見えた。

「ソレト兵士、一緒、居タ。森ニ!」

「兵士様も?? ……森だと!? 迷いの森か!! なぜゼラが!? 」

 そうこうしている間に、彼とともに荷台の上にいる娘が目を覚ます。

「ん……。あれぇ、ギダ様ぁ? ……サイのおいちゃん。あと……あぁ、お城の兵士様だぁ」

 ぼんやりはしているが、誰が居るかの認識は出来ているらしい。娘は身体をゆっくりと起こした。

「ゼラ!! 無事で良かった……。だが一体、なぜ森に!? サイは、お前と兵士様が森にいたと。お前は城に行ったはずでは……」