兵士長は急ぎ城に戻って王子に向かい、床に頭がつくほどに下げて言った。

「王子様……迷いの森の胞子が異常に飛散し、私どもの魔力ではとても娘の捜索など……。その、皆倒れてしまっては……」

 どうやら、魔力ばかり高い兵士達が裏目に出てしまったらしい。

 城には高魔族の者しかいない。
 体力や力の方が高い“低魔族”と呼ばれる者たちは下に見られ、城に出入りすることも滅多に無かったほどだったからだ。

「馬鹿な!! ……もう良い、私が直々に行く。あの者たちは早急に下がらせろ!! 」

 彼は苛つき、戻った兵士長にそう命じた。
 兵士長はもちろん慌てる。

「王子様、貴方様に何かあっては!! 」

「……我が魔力が、信用出来ぬとでも?? 」

「い、いえ……」

 プライドが高いばかりに王子である自分が出来ないと言えるはずもなく、彼は自ら娘の救出に行く羽目になってしまった。

「誰にも言うな!! 誰かに漏らせばただでは済まさん……! 」

 謁見の間に居た数人の者達が呆気に取られる中、彼は直ぐさま城の兵達と同じような姿になり大翼を広げ、城を飛び立った。