魔族の王子の進む道 〜俺様王子が魔王になるまで〜

「わあ、薄暗ぁい……」

 広大な森の入り口には魔界樹が生い茂り、立て札が立っていた。

「え〜と……なんて読むんだっけ?? たしか立て札が立ってたら、何か気をつけないとならないんだよね。気をつけよう! 」

『魔力を奪う魔樹の胞子が飛ぶ時期につき、特に立ち入りを禁ず』

 その立て札も読めないまま、娘は森に入っていった。


「弟王子様ぁ〜!! ライ王子様の、弟の王子様ぁ〜!! いませんか〜!? 」

 さすが魔族の中でも体力がある方の小角族。彼女は草をかき分け、大花を避け、吸血草は枯れ枝で叩きながら森を進んだ。

「えいっ、えいっ……あれ?? なんか……霧かなあ? 」

 周りが何やらモヤ掛かってきた。
 目も鼻も、耳もいい彼女にとっては、視界が多少悪いくらいは何ともない。
 しかし問題は、この霧のような“何か”。

「?? あ……」

 良くわからないうちに突然身体が傾く。
 そして力が段々と抜けていくのを感じ、膝から崩れ落ちた。

「弟……おう、じ……さ、ま……」

 間際まで、顔も見たことがない弟王子の事が頭から離れずそのまま倒れ、娘は森の中で気を失った。