「ははっ」
湯木君がへらりと笑う。
そして、次の瞬間___手を伸ばした。
「待って…!!」
それを止めようとして、私も手を伸ばす。
だけど……。
間に合わなかった。
湯木君の指先はキノコの皿に触れている。
「なん…で……」
言葉を失う私に湯木君がニカッと笑った。
「んー、ほら、俺駆け出しとはいえ配信者だし?目立つことして爪痕残しとかないとじゃん?」
まるで茶化すような明るい口ぶり。
命が掛かっているのに、何を考えてるの…?
「なに…バカなことを言ってるんですか…!」
声を荒げたのは高田君だった。
眉をつり上げて湯木君を睨んでいる。
「分かっているでしょう!これはもうテレビの撮影ではないんですよ!?この状況で一体、何に爪痕を残すというんですか…!?」
「んー…人生かな」
高田君の言葉に、湯木君は小さく笑う。
「俺さー、ぱっとしない人生だったんだよね」
キノコを指先でつつきながら湯木君が語る。
昔を思い出すように、淡々と。



