「高田、湯木、先に選んでくれ」
テーブルの前。
並んだ皿を見つめながら、轟君が呟いた。
「……いいんですか?後手に回ると不利ですよ」
眼鏡のブリッジを上げながら高田君が言った。
轟君は頷く。
「かまわない」
その言葉を聞いて高田君は「…そうですか」と息を吐いた。
「…なら、僕はこれにします」
高田君が焼き鮭の皿を手にした。
次は…きっと湯木君だろう。
そう思っていたけど、そうはならなかった。
「…俺もう少し考えたいから、轟が先に選んで」
湯木君が頭の後ろで手を組む。
「…なら、お前が決めるまで待つ」
「だーかーら…いいって。ほら、先に選んで」
湯木君が轟君をあしらうようにひらりと手を振った。
なにか言いたそうだった轟君が、言葉を飲み込む。
そのまま小さくため息を吐いて、諦めたように手を伸ばした。
触れたのは唐辛子が乗った皿。
「お前も…早く選べよ」
「おー」
「………」
轟君は数回口を開いては閉じてを繰り返し、湯木君に何か言おうとしたけれど…。
結局、なにも言わずにテーブルから離れた。



