「……知らないんだ、本当に」
轟君が、口を開いた。
「確かに俺の親は“轟グループ”の社長だ…上に歳の離れた兄貴もいる…だけど、この場所のこと…なにも…本当になにも、知らない」
スピーカーから音が流れる。
『皆様、次の部屋へ移動を始めてください。これは二度目の警告です』
それを無視して轟君は続けた。
「朝起きて、学校に行こうとしていた…いつも通り、送迎の車に乗ろうとしたとき、誰かにスプレーをかけられて…目が覚めたらここにいた」
轟君の目は真っ直ぐに愛梨ちゃんを見ている。
連れて来られた経緯は、私と同じだ。
たぶん、ここにいる皆も…長峰君も同じだったんだろう。
皆、うつむいて静かに轟君の話しを聞いていた。
「……っ…う、ぐっ……ひっく……」
愛梨ちゃんのすすり泣く声が聞こえる。
沈黙が、室内を包んだ。
数分間、そうして皆が黙って、泣いて。
やがて痺れをきらしたかのように、雑音が響いた。
『皆様、次の部屋へ移動を始めてください。これは最後の警告です、従わない場合、強制的に脱落とみなします』



