さっき知り合ったばかりの人が口にした飲み物なんて、嫌にきまってる。
それに……。
今の言い方じゃ、まるで私が轟君に手伝わせて、ポイントだけもらおうとしてるみたいだ。
さっきの愛梨ちゃんと長峰君が頭の中に浮かぶ。
「え…えっと、じゃあ私はこれで……」
轟君から離れようと背中を向けて歩きだす。
すると、後ろから声が聞こえた。
「飲む」
そう、一言だけ。
振り返ると、轟君が私に手を差し出している。
「え…?あ……」
渡すかどうか戸惑う私に、轟君が近寄る。
「そのペットボトル、貸して」
それは、今までみたいな圧を感じさせる口調じゃなくて…どこか優しげなものに聞こえた。
大人しく、言われた通りにペットボトルを渡す。
轟君はそれを受け取ると、キャップを外してコーヒーを飲み始めた。
ごくごくと、喉仏が上下する。
「……返す」
そして渡されたペットボトルは、すっかり空になっていた。
私は目を丸くする。
……もしかして、手伝ってくれたの……?
「助かった」
そう言って離れていく轟君の背中をぼーっと見つめる。
…轟君って、あまり怖い人じゃないのかも…?



