パーカーの男の子が缶詰の黄桃。

短髪の男の子が五切れの輪切りパイナップル。

ドアノブの男の子がスターフルーツ。

そして、眼鏡の男の子が…輪切りのレモン。


「あの…これ、僕はどうやって食べろと?」


眼鏡の男の子がレモンを見つめながら問いかける。


「せめてどこかにスプーンはありませんか?」


そう言われて全員でテーブルを探すけど、どこにもない。

収納があるようなスペースもなくて、眼鏡の男の子は諦めたように皿をテーブルに置いた。


「え…食べないんですか?」


私がそう言うと、男の子は眼鏡の位置を直しながら冷めた口調でこう言った。


「スプーンがあれば違ったんですけどね…さすがに指で食べるわけにはいきませんし」


眼鏡の男の子は言い終わるなりテーブルから離れていってしまった。


「眼鏡君、可哀想ー。他の食べ物なら楽勝だったのに」


指で黄桃を摑みながらパーカーの男の子が言う。

その横でパイナップルをつまみながら短髪の男の子が苦笑していた。

皆が黙々と食べ始め、私も食べようとマンゴーに手を伸ばしたとき。