フード・デスゲーム


だから、表向きは“デスゲームは私の妄想だった”ということにして、そう見えるように振る舞った。

早く家に帰りたかった理由は二つある。

一つは轟グループの長男…彩斗君のお兄さんに会うためだ。

彩斗君と一緒にお父さんのことを調べていた彼なら、助けになってくれるかもしれない。

…優しい人だと、彩斗君は言っていた。

デスゲームのことを知れば、きっと信じて話を聞いてくれるはずだ。

ましてや、それに弟が巻き込まれていたのなら…。

きっと、彩斗君のことは行方不明にされているだろう。

捜しているはずだ。

弟の…彩斗君のことを。

伝えなきゃいけない。

それがどんなに残酷な事実でも、彩斗君の頑張りを、必死に生きていたことを伝えなきゃいけない。

それが、生き残ってしまった私にできる唯一のことだと思うから。

死んでしまった皆の家族の中で、デスゲームなんて証拠もない話を聞いてくれるのは、彼のお兄さんだけだ。

そして…最後の理由は。

これは、個人的なものだった。


「お世話になりました、さようなら」


お母さんと共に、看護師さん達にお礼を言って車に向かう。