「彩、忘れ物ない?」
お母さんが私に声をかける。
仕事に戻ったお父さんのいない、二人だけの空間。
帰るための支度を整えていた私はお母さんに視線を向けた。
「うん、大丈夫」
「そう、じゃあ行きましょうか」
退院が決まった日に、警察から両親へ連絡があったと聞いた。
私の服に付着していた返り血は動物の血である。
よって当事件は、井原 彩が異常者に誘拐され、動物への虐待を目の前でされたため、気が動転して精神が錯乱した可能性がある。
そんな馬鹿げた推理で、私の行方不明は…皆の死は片付けられていた。
それを受けて、先生や看護師さんも口々に言う。
「だから、デスゲームなんて存在しないんだよ」
まるで洗脳するように、何度も。
でも、きっと。
これがデスゲーム側の、やり方なんだ。
彩斗君が言っていた通りなら、轟グループの社長…彩斗君のお父さんと同じように、デスゲームに加担している人達が大勢いるはず。
最後に現れた仮面の人達もそうだ。
それに私は、警察の中にもデスゲーム側と繋がっている人がいるんだと思っている。
今までもこうして、デスゲームの証拠を隠蔽してきたのではないだろうか。
もしかしたら、この病院にもいるかもしれない。



