『うーん、カメラここでいいかなー?バレないよねぇ?』
若い身なりの女が、植木鉢の中に小型のカメラを仕掛けている様子が映っている。
カメラに向かって女が手を振った。
『今から轟グループの社長と接待でーす、いつか私がこの世界から切られそうになっても手元に置いてもらえるように…録画して脅す用でーす』
女はカメラの設置を終えると近くのベッドへ腰かけた。
『まだかなー、おじさん』
カメラに映るのはどこかのホテルらしき部屋。
それからしばらくしてドアをノックする音。
『フミ君いらっしゃい、週刊誌とかにバレなかった?』
駆け寄る女を抱き締める男が映る。
フミ君と呼ばれた、中年じみた風貌の男はだらしない顔で女の腰に腕を回した。
『あぁ、もちろん。囮の車を何台か走らせたからね』
『きゃー、さすがフミ君!ねぇねぇ、座ろ座ろ』
女がベッドに男を呼んだ。
倒れ込むように女に覆い被さる男。
女が笑い声を上げる。
『えー、ちょっと気が早すぎだってー!どうしたの?フミ君、今日はいつもよりご機嫌じゃん』
『あぁ、実はウチの次男が“家出”をしてね…長男と違って頭の悪いやつだったからもう助かって助かって』
『心配しないなんて悪いパパなんだぁ、フミ君』
女が男の首元へ腕を回す。
『…今、私は家出と言ったがね…実は、この前のあれが実行されたんだよ』
男が声を潜める。
『君も“目障りな相手の名前”を書いただろ?あの黒い…招待状みたいな見た目の…ほら、覚えていないかい?』
『あー、書いたかも…?ウチの一番売れてたメンバーの名前…え、マジな話……?確かにあの子今、顔見せないけど……』
男がヘラヘラと笑う。
『あれ、実はデスゲームに参加する人が決まるってやつなんだよね…そして私の次男とたぶん…君の書いたメンバーも一週間帰っていない…』
___と、いうことはつまり?
男が尋ねると、女の表情が固まった。
しばらくの沈黙。
『…なんて冗談さ!冗談!本気にしたかい?』
『え!?ちょ、酷い~!ちょっと本気にしちゃったじゃん!』
おどける男の肩を女がぽかぽかと叩いた。
『はは、悪い悪い』
『もう~、怒った!私今日、一人でお風呂入ってくるから、ついて来ちゃダメだよフミ君!!』
そう言って、平謝りする男をベッドに残し、風呂場へと歩いて行く女。
男はそれを一人で見送り、呟いた。
『…冗談じゃなくて、可哀想になぁ…』
カメラに映る男は、そう言って笑っていた。



