お医者様の職業病って???
「基本的に相手の反応に敏感というか。冷静に観察できる状態が常態というか」
言われてみれば確かに納得。
だって、初対面の人の体に触れて処置をしたりするのだもの。
「だから、冷静さを保とうと意識しなくても、自動的にそういう回路が働いてしまう、みたいな?」
「自動的に、ですか」
「ただ、そうは言ってもだよ」
「えっ」
(ああっ……)
瞬間、しっかりと組み敷かれて両手の自由を奪われる。
「好きな人はまた別だから。とても冷静ではいられないこともあるわけだ」
「あぁ……っ」
(もう、耳とかっ!)
耳たぶを甘く食まれて、体がびくんと反応する。
「感情的になりすぎるのはどうかと思いつつ、ね」
決まり悪そうに言いながらも、どこも悪びれた様子がないような……。
「君が思っているほど僕は余裕がある男ではなくて。案外えげつないことを考えていたりするのかもよ?」
(えっ……)
彼はそう言ってにっこり笑うと、ちょっと強引でひどく官能的なキスをした。
(えげつないって、こういうっ……)
そのキスは、優しい微笑みとは裏腹に、刺激的に甘く蠱惑的で。
(ああもう、これって底なし沼だ)
私はすっかり翻弄されて、前後不覚に。
「可愛いね、千佳さんは」
「意地悪です、秋彦さんは……」
「意地悪な僕は嫌い?」
(そうやって、わかっているくせに)
「千佳さん?」
「……嫌い、じゃないです」
(だって、本当は優しいって知ってるもん)
ちょっと恨めしそうに呟く私を、彼が愉快そうにのんきに笑う。
「好きな女の子を苛めちゃう男の子の心理って、こういう感じなのかあ」
「なっ……」
「本当、千佳さんが可愛すぎて」
そうして、私は彼の新たな一面を少しだけ知った――。
「お風呂、一緒にどう?」
「そうですね……」
いつもなら、いわゆる“事後”はぬくぬく眠ってしまうのだけど。
今夜はなんというか、いつになく“ヨレヨレ”で。
必ずしも“激しい運動”をしたわけでもないのに、ぐうの音も出ないありさま?
翌朝また入るつもりでお湯を落とさずにいてよかった。
追いだきがおわって、さあ入ろうとお風呂のフタを開けると――。
「そういえば」
「温州みかん、だったかと」
オレンジ色のお湯に思わずふたりで苦笑い。
すっかり忘れていたけど、ここにもオレンジが潜んでいたとは。
(むむむ、おそるべし無意識)
向かい合って湯船に浸かりながら、なんとなく“今後”のことが話題になる。
「千佳さんのお家にご挨拶に伺うのは3月でよさそうなんだよね?」
「はい。秋彦さんのお家のほうも、ですよね?」
「うん。それで大丈夫」
私たちは結婚についての“前振り(前説?)”をすべく帰省して、大晦日と元日をそれぞれ実家で過ごした。
そもそも同棲をする際に、両親には真剣にお付き合いしている人として、秋彦さんの素性などなどは説明済みではあったのだけど。
お正月に、具体的に春には入籍したいという考えを伝えたところ、両親は手放しで大喜び。
けれども、兄だけは冷静だった。
「盆と正月が一緒にきたみたいだ」と小躍りする両親に「今はもともと正月だ」と冷静な突っ込みを入れた兄。
ちなみに、兄と私は顔はあまり似ていないが、性格は割と似ていたりする。
両親が居ないところで、兄は私に言った。
「父さん母さんはあんなだけど、ちぃが堅実な人間でよかった」
兄は私のことを「ちぃ」と呼ぶ。
「私こそ、謙クンが冷静なオトナでよかったよ」
私は兄の謙吾を「謙クン」と呼ぶ。
「謙クンにまで“玉の輿だあ”なんて浮かれられたら、私けっこうきつかったもん」
「手に職という点では食いっぱぐれる心配は少ないだろうけど。医者と結婚すれば玉の輿だなんて考えは古すぎだからな」
「わかってる。彼は優秀で誠実な人だけど、私は私でしっかり働かなきゃって思ってるから」
「基本的に相手の反応に敏感というか。冷静に観察できる状態が常態というか」
言われてみれば確かに納得。
だって、初対面の人の体に触れて処置をしたりするのだもの。
「だから、冷静さを保とうと意識しなくても、自動的にそういう回路が働いてしまう、みたいな?」
「自動的に、ですか」
「ただ、そうは言ってもだよ」
「えっ」
(ああっ……)
瞬間、しっかりと組み敷かれて両手の自由を奪われる。
「好きな人はまた別だから。とても冷静ではいられないこともあるわけだ」
「あぁ……っ」
(もう、耳とかっ!)
耳たぶを甘く食まれて、体がびくんと反応する。
「感情的になりすぎるのはどうかと思いつつ、ね」
決まり悪そうに言いながらも、どこも悪びれた様子がないような……。
「君が思っているほど僕は余裕がある男ではなくて。案外えげつないことを考えていたりするのかもよ?」
(えっ……)
彼はそう言ってにっこり笑うと、ちょっと強引でひどく官能的なキスをした。
(えげつないって、こういうっ……)
そのキスは、優しい微笑みとは裏腹に、刺激的に甘く蠱惑的で。
(ああもう、これって底なし沼だ)
私はすっかり翻弄されて、前後不覚に。
「可愛いね、千佳さんは」
「意地悪です、秋彦さんは……」
「意地悪な僕は嫌い?」
(そうやって、わかっているくせに)
「千佳さん?」
「……嫌い、じゃないです」
(だって、本当は優しいって知ってるもん)
ちょっと恨めしそうに呟く私を、彼が愉快そうにのんきに笑う。
「好きな女の子を苛めちゃう男の子の心理って、こういう感じなのかあ」
「なっ……」
「本当、千佳さんが可愛すぎて」
そうして、私は彼の新たな一面を少しだけ知った――。
「お風呂、一緒にどう?」
「そうですね……」
いつもなら、いわゆる“事後”はぬくぬく眠ってしまうのだけど。
今夜はなんというか、いつになく“ヨレヨレ”で。
必ずしも“激しい運動”をしたわけでもないのに、ぐうの音も出ないありさま?
翌朝また入るつもりでお湯を落とさずにいてよかった。
追いだきがおわって、さあ入ろうとお風呂のフタを開けると――。
「そういえば」
「温州みかん、だったかと」
オレンジ色のお湯に思わずふたりで苦笑い。
すっかり忘れていたけど、ここにもオレンジが潜んでいたとは。
(むむむ、おそるべし無意識)
向かい合って湯船に浸かりながら、なんとなく“今後”のことが話題になる。
「千佳さんのお家にご挨拶に伺うのは3月でよさそうなんだよね?」
「はい。秋彦さんのお家のほうも、ですよね?」
「うん。それで大丈夫」
私たちは結婚についての“前振り(前説?)”をすべく帰省して、大晦日と元日をそれぞれ実家で過ごした。
そもそも同棲をする際に、両親には真剣にお付き合いしている人として、秋彦さんの素性などなどは説明済みではあったのだけど。
お正月に、具体的に春には入籍したいという考えを伝えたところ、両親は手放しで大喜び。
けれども、兄だけは冷静だった。
「盆と正月が一緒にきたみたいだ」と小躍りする両親に「今はもともと正月だ」と冷静な突っ込みを入れた兄。
ちなみに、兄と私は顔はあまり似ていないが、性格は割と似ていたりする。
両親が居ないところで、兄は私に言った。
「父さん母さんはあんなだけど、ちぃが堅実な人間でよかった」
兄は私のことを「ちぃ」と呼ぶ。
「私こそ、謙クンが冷静なオトナでよかったよ」
私は兄の謙吾を「謙クン」と呼ぶ。
「謙クンにまで“玉の輿だあ”なんて浮かれられたら、私けっこうきつかったもん」
「手に職という点では食いっぱぐれる心配は少ないだろうけど。医者と結婚すれば玉の輿だなんて考えは古すぎだからな」
「わかってる。彼は優秀で誠実な人だけど、私は私でしっかり働かなきゃって思ってるから」



