気まぐれな飼い猫というより、これではまるでいじらしい忠犬のよう。
「秋彦さんは、今日はもうおしまいですか?」
「そうだね。千佳さんは?」
「私も今日は店じまいです」
歯磨きもしたし、ご飯の予約だってセット済みだし、あとはもう――。
「じゃあ、寝ようか」
「そうですね」
ふたりともすぐには寝ないことをよくわかっているくせに。
あらかじめオイルヒーターを入れておいたので、寝室はちょうどいい塩梅に暖かかった。
そして、いい塩梅になっているのはお部屋の温度だけじゃなくて――。
まったく寝る気のないふたりが、ベッドの端に並んで掛ける。
「千佳さん、寝る前に時間ある?」
「それはもう、たっぷりと?」
顔を見合わせ笑い合って、それから静かに見つめ合う。
彼の手が私の髪を優しく梳いて耳にかけ、頬に触れ、肩に置かれる。
(ずっとずっと、こうしたかった)
とろけるような甘い空気に包まれながら、手と手を重ね、唇を重ねる。
ずっと焦がれて待ちわびて、ようやくたどり着けた、いま“このとき”。
(もっと、ずっと、こうしていたい……)
なのに、そんな私の気持ちを知ってかしらずか、彼がためらいがちに唇を離す。
(もう少し……)
なんだかちょっと淋しい気持ちで、おずおずと顔を上げると――。
「まいったな」
「え?」
穏やかだけれど熱っぽい彼の視線につかまった。
「千佳さんが可愛すぎて困る」
「そんなこと……」
「優しくできなかったらごめん」
「えっ、な……っ」
その刹那、彼は無造作に眼鏡を外すと、私の言葉をキスで強引に遮った。
始まりのキスのような優しいそれとは違う、くらくらするような、とても深くて熱いキス。
甘い熱にからだがとけて、すべてのたがが外れてしまうような。
甘い痺れにとらわれて、すべての自由を奪われたような。
おかしな感覚に、ふわふわして、くらくらして。
あまり彼らしくない強引さに、ドキドキする。
(もっと、ずっと……もっと……)
きっと、欲しがりなのは私のほう。
気持ち乱暴に(といっても十分優しいのだけど)押し倒されて、天井を背景に彼を見る。
(電気、つけたままなんだけどな……)
恥ずかしさにぷいと視線を逸らすも、彼にされるがまま。
優しいキスの雨はくすぐったいのに気持ちがよくて、ドキドキしながら、なんだかほっこり嬉しくなる。
そうして、すっかり胸がはだけて本日の下着があらわになったところで、彼が一言。
「オレンジ?」
「アプリコット、だそうです」
決して狙ったつもりはないのだけど、今さらながら無意識にカボチャに引っ張られていたのかも?
「可愛い。千佳さん、こういう色も似合うね」
(もう、そうやってさらっと臆面もなく褒めるから!)
すごく嬉しくて、嬉しすぎて気恥ずかしくて、ついつい可愛くない態度に……。
「じゃあ、つけたままにしときます?」
「いや、脱がすけどね」
そりゃあまあ、こちらも脱がされるために装備(?)してきておりますが。
「電気、つけたままなんですけど?」
「ダメ? ほら、僕は眼鏡外すとけっこう見えないし?」
「どれくらい見えないか、入れかわって検証してみたいところですね」
私がふふふと笑うと、彼が釣られたようにくすりと笑う。
「まあ、仕方がないか。オレンジなのもわかったし」
「アプリコットですよ」
「そうそう、アプリコット。そういえば、常夜灯のことを千佳さんは“小さい電気”って言うでしょ?」
「言いますね」
「ちょっと思い出したのだけど、子どもの頃に友達が“オレンジ電気”って言っていたな、と」
確かに、常夜灯の色はオレンジ色っぽいかも?
「なんか今夜はオレンジづいてますね。この下着も、小さい電気にしたらよりオレンジになるかも?」
「アプリコットでしょ」
「そうそう、そうでした。よりアプリコット?」
まあ、どうせほどなく脱がされてしまうのだけれど。
「秋彦さんは、今日はもうおしまいですか?」
「そうだね。千佳さんは?」
「私も今日は店じまいです」
歯磨きもしたし、ご飯の予約だってセット済みだし、あとはもう――。
「じゃあ、寝ようか」
「そうですね」
ふたりともすぐには寝ないことをよくわかっているくせに。
あらかじめオイルヒーターを入れておいたので、寝室はちょうどいい塩梅に暖かかった。
そして、いい塩梅になっているのはお部屋の温度だけじゃなくて――。
まったく寝る気のないふたりが、ベッドの端に並んで掛ける。
「千佳さん、寝る前に時間ある?」
「それはもう、たっぷりと?」
顔を見合わせ笑い合って、それから静かに見つめ合う。
彼の手が私の髪を優しく梳いて耳にかけ、頬に触れ、肩に置かれる。
(ずっとずっと、こうしたかった)
とろけるような甘い空気に包まれながら、手と手を重ね、唇を重ねる。
ずっと焦がれて待ちわびて、ようやくたどり着けた、いま“このとき”。
(もっと、ずっと、こうしていたい……)
なのに、そんな私の気持ちを知ってかしらずか、彼がためらいがちに唇を離す。
(もう少し……)
なんだかちょっと淋しい気持ちで、おずおずと顔を上げると――。
「まいったな」
「え?」
穏やかだけれど熱っぽい彼の視線につかまった。
「千佳さんが可愛すぎて困る」
「そんなこと……」
「優しくできなかったらごめん」
「えっ、な……っ」
その刹那、彼は無造作に眼鏡を外すと、私の言葉をキスで強引に遮った。
始まりのキスのような優しいそれとは違う、くらくらするような、とても深くて熱いキス。
甘い熱にからだがとけて、すべてのたがが外れてしまうような。
甘い痺れにとらわれて、すべての自由を奪われたような。
おかしな感覚に、ふわふわして、くらくらして。
あまり彼らしくない強引さに、ドキドキする。
(もっと、ずっと……もっと……)
きっと、欲しがりなのは私のほう。
気持ち乱暴に(といっても十分優しいのだけど)押し倒されて、天井を背景に彼を見る。
(電気、つけたままなんだけどな……)
恥ずかしさにぷいと視線を逸らすも、彼にされるがまま。
優しいキスの雨はくすぐったいのに気持ちがよくて、ドキドキしながら、なんだかほっこり嬉しくなる。
そうして、すっかり胸がはだけて本日の下着があらわになったところで、彼が一言。
「オレンジ?」
「アプリコット、だそうです」
決して狙ったつもりはないのだけど、今さらながら無意識にカボチャに引っ張られていたのかも?
「可愛い。千佳さん、こういう色も似合うね」
(もう、そうやってさらっと臆面もなく褒めるから!)
すごく嬉しくて、嬉しすぎて気恥ずかしくて、ついつい可愛くない態度に……。
「じゃあ、つけたままにしときます?」
「いや、脱がすけどね」
そりゃあまあ、こちらも脱がされるために装備(?)してきておりますが。
「電気、つけたままなんですけど?」
「ダメ? ほら、僕は眼鏡外すとけっこう見えないし?」
「どれくらい見えないか、入れかわって検証してみたいところですね」
私がふふふと笑うと、彼が釣られたようにくすりと笑う。
「まあ、仕方がないか。オレンジなのもわかったし」
「アプリコットですよ」
「そうそう、アプリコット。そういえば、常夜灯のことを千佳さんは“小さい電気”って言うでしょ?」
「言いますね」
「ちょっと思い出したのだけど、子どもの頃に友達が“オレンジ電気”って言っていたな、と」
確かに、常夜灯の色はオレンジ色っぽいかも?
「なんか今夜はオレンジづいてますね。この下着も、小さい電気にしたらよりオレンジになるかも?」
「アプリコットでしょ」
「そうそう、そうでした。よりアプリコット?」
まあ、どうせほどなく脱がされてしまうのだけれど。



