部屋を出て廊下を歩いていると、私の姿を見つけたアンジェラが駆け寄ってきた。
「ソフィアお姉さま!」
彼女は花が咲き誇るような満面の笑みを浮かべている。
「お姉さま、本当に悪魔公爵のところへ嫁ぐつもりなの?」
私は彼女から顔を背けながら冷たく言った。
「ええ。仕方ないでしょう。嫌だと言っても、認められないのだから」
「噂で聞いたのだけど、悪魔は満月の晩、力が強くなるんですって。
だからその時に、人間から全身の血を搾り取って、血肉を食べる儀式をするらしいわ! ああ、なんて恐ろしいのでしょう!」
そう言って、彼女はわざとらしく震える真似をした。
私を心配しているわけではないだろうと思っていたけれど、やはり嫌味を言いたかっただけか。
「かわいそうなお姉さま。もう二度と会うこともないでしょうけれど、お元気で」
高い声を立てて嘲笑いながら、アンジェラは去って行った。

