夕陽射す、教室。

 ひとりぼっち。

 彼が部活を終えるのを待っている。

 窓の外を見つめていると、バタバタと駆けていく理生の姿が見えた。

 私の、大好きな人。

 けど、理生とは小学校低学年の時からの幼馴染みで。毎日のように一緒に居るから、理生にとって私は、兄弟みたいなもんで。


『─…(あいつ)良いやつだからさ、お前見る目あるよ。交際おめでとう!』


 そう言って理生は去っていったけど…理生には一番、言われたくない言葉だった。おめでとうなんて…言われたくなかった。

 大好きだから。兄弟としてじゃなく『異性』として好きだから。でもきっと、理生にとって私は『異性』じゃないから。だから…いつまでも望みのない恋をするより、私のことを『好き』って言ってくれる人と付き合った方がいいのかなって思って…理生のことは諦めて、私なんかに何度も告白してくれる榊君と付き合うことにした。

 ──────…けど。

「やっぱ…理生のことが好きだなぁ…」

涙をぼろぼろと溢しながら、走っていく理生の背中を見えなくなるまで見つめた。
 そして。

「さようなら理生。大好きだよ…」

 掠れた声で、私は見えなくなった理生に呟いた───…