なにも知らないラティーナは、再びこんなことを妖精に聞きました。
「ようせいさん、“にんげん”というのはなんなの?なぜ、わなを作るの?」
その言葉を聞いて、妖精は驚いたように目を丸くしました。
「ああ、無垢な人魚の子よ。そんなことも知らずにここまで来てしまったのかい?」
ラティーナの尾びれに絡まるワナを取り除きながら、妖精は続けます。
「人間とは賢く、危ない生き物のことだ。僕たち妖精や、キミたち人魚を捕まえるためにワナを作って仕掛けているんだ」
だから、見かけても近寄ってはいけないよ。
妖精がそう言ったとき、ふっとラティーナの尾びれが軽くなりました。
「ああ、動けるようになったわ、ありがとう、ようせいさん!」
ワナから解放され、動けるようになったラティーナは、尾びれを揺らしながら笑顔でお礼を言います。
その無邪気さを、妖精は危ういと感じました。
「もう、ここにきてはいけないよ。キミも海へお戻り」
そう言って背中を向けて森へと帰ろうとします。
……けれど。
「待って!」
ラティーナの声が、妖精の歩みを止めました。



