人魚と妖精


「…分かった。この人魚は海に返そう」

男の人がそう言って、妖精の両腕を縄で縛りあげました。


「皆、その人魚の網を取ってやってくれ」


その言葉を聞くなり、周りのにんげんたちはラティーナから網を取り除きます。

自由になったラティーナは、砂浜の上を這うように妖精の元へと向かいました。


「そんな…なんてこと…私のせいでごめんなさい…!」


なげくラティーナに、妖精が微笑みかけます。


「人魚の子。優しい心を持ったキミこそ、生きるべきさ。だから、泣かないでおくれ。これは僕が決めたことなんだから」


妖精の瞳は優しく細められ、ラティーナの目からはますます涙が溢れて出てきました。


「…さあ、もうお行き。そして二度とこの島へ…人間のいる場所へは、来ちゃいけないよ」


その言葉を最後に、妖精はにんげんたちに連れていかれました。

去り際、男の人は泣き続けるラティーナに謝罪の言葉をこぼします。


「…すまない。俺たちにも暮らしがあるんだ…残酷なことをする俺たち人間を、どうか恨んでおくれ」


去って行くその背を見届けることなく、ラティーナは海へと飛び込みました。