って、そんなはずはないか。
 名前も知らない。
 顔だって、まともに真正面から見たことはなかった。
 会話なんて以ての外。

 これは恋ではない。
 恋であるはずがない。
 だからこそ、勝手な想像ができるのだ。

 毎日のように同じ時間を図書館で過ごす──
 何だか恋愛映画とかになりそうじゃない?

 それでいつか、彼のほうも私のことを見つけてくれる。
 そうして、隣同士で座って勉強するようになるのだ。
 ひとりではつまらなかった勉強が、ふたりなら楽しくて……

 なんてね!
 現実はそうはならない。

 でも、私にとって図書館での勉強はすでに楽しいものになっていた。
 勝手に彼と一緒に勉強している気分になって。

 妄想とともに、宿題のほうもしっかり進んでいった──