たしかに身だしなみを整えれば年相応になる。なりはするが、オズワルドのアイスブルーの目は女性や子どもを怯えさせるのだ。濃い色に染めている髪も、元に戻せば白っぽい金髪でさらに冷たい印象を深める。
 甥のマークはまだましだったが、姪のキャロルにだって昔何度泣かれたことか……。

 オズワルドの風貌は睨みをきかせるには恐ろしく役に立つ。剣を持って対峙すれば、相手が一瞬ひるむ程度には。だが、女性を口説いて泣かれるのは御免だ。

 昔親同士の話で婚約寸前だった令嬢にも怯えられ、さすがに無理だろうと話を白紙にしたことさえあるのだ。あのグレースにまで泣かれたら立ち直れない気がする。いや、立ち直れる気がみじんもしない……。
 そこまで考えて、オズワルドは大きく息をついた。

(まいったな。思っていた以上にベタぼれじゃないか)

 胸を締め付ける苦しさに軽く目を閉じると、エミリアが軽く息をついた。

「身分も歳も問題ないのになぁ。今度の舞踏会に誘ってドレスを贈れば喜ぶんじゃないか? ミズリー公爵?」

 最近受けた爵位で姉に呼ばれ、オズワルドは肩をすくめる。
 姉は次期国王で、来年戴冠式を控えている。彼女のサポートに当たるため、オズワルドは公爵位を授与されたばかりだ。

 まだ二十八歳のオズワルドだが、妻がいないことで周りは少し渋い顔だった。
 しかし今の立場なら、そう、立場だけなら、妻になりたいと望んでくれる女性が多いらしく、周りが少しうるさい。オズワルド本人を見れば、老けた姿であろうと素の姿であろうと、決して良い印象を持ってないのが分かるだけにおかしなものだ。

 今度の舞踏会は王宮で開かれる。グレースは参加したことがないだろうし、きっと目を輝かせて楽しんでくれることは容易に想像がついた。だが……

「彼女にはきっと婚約者なり恋人がいますよ」