「な⋯⋯何を言ってるんですか」
「さっきも言ったでしょう?この世知辛い世の中で、リスクを背負ってまで子供を助ける優しさ。あと、理不尽な相手に言われっぱなしにならないところも気持ちがいい」
 なんだ、そういうことね⋯⋯って、当たり前か。
「何も、昔がよかったなんて年寄りくさいことを言うつもりはないんですよ。だけど、あまりにも今の時代は冷たすぎやしませんか」
「それは⋯⋯私も思います」
「でも、あなたみたいな人を見て、まだまだ世の中捨てたもんじゃないと思いました」
 彼は、爽やかな笑みを私に向けた。
「ちょっと聞きたいんですけど、さっきのお財布、あれは何処で買ったんですか?」
「ああ!あれは、前に知人からパスケースを頂いて、そのデザインに一目惚れしたんです。どこのブランドか聞いて、オンラインで注文しました。ヨリコホソノって、ご存知ですか?」
「ええ⋯⋯よく知ってますよ。毎日一緒に居ますから」