何故、これほど、急に態度を変えた上に、しなを作っているのかと、驚いて青年の顔を見上げた。
 あ、なるほどね⋯⋯。
 彼は、かなりの美青年だったのだ。

「じゃあ、行きましょうか」
 彼は私に向かってそう言うが、
「行くって、何処へ?」
「お席の方へ」
「いえ、私は⋯⋯ええっ!?」
 女同士、火花を散らしている間に、特急は走り出していた⋯⋯!
「どどどど⋯⋯どうしよう!?」
 私は、顔面蒼白になるのを感じた。
「どうしたんです?」
 美青年が問い、
「私⋯⋯ポケットの中身、これだけなんですけど!」
 そう言って、小銭と入場券を見せた。
「まあまあ、落ち着いて⋯⋯一旦、デッキに出ましょう」
 私は、元凶となった夫婦を無言で睨みつけたが、彼らは知らん顔をしている。
 美青年は、そっと私の肩を引き寄せながら、デッキまで一緒に出た。
 誰も居ないデッキに出ると、彼は急に笑い出すではないか。