「こんな遠くまで遊びに来てくれて、ありがとね!」

 私は今、ターミナル駅まで、大学時代の友人を見送りに来ている。
「こちらこそ!あちこち観光して、美味しいもの食べて。何より、依子と久々に会えて本当によかったわ」
 彼女は、遠路遥々、私の住む街へ旅行でやって来た。
 よく聞くと、実は、夫と喧嘩して、家出がてら⋯⋯でもあったらしいが。
「あ!それから、このヨリコホソノの財布もありがとう!普通に買ったら、なかなかいいお値段するでしょうに」
「いえいえ⋯⋯友達にヨリコホソノって言われると、くすぐったくなるけどね」

 そうこうしている内に、発車のベルが鳴る。
「元気でねー!また手紙書くよ」
「私も。今度は旦那さんとおいで!」
 遠ざかる列車に手を振り、ポケットの中の入場券を確認する。
「さて、帰ろっと⋯⋯」

 その時、耳を劈くような子供の泣き声に、驚いて振り返った。
 何歳ぐらいだろう⋯⋯?