シア「レックスはなぜ戦うんだ。」

レックス「なぜって…。そりゃ帝国の為だろ?」

シア「そりゃそうだけどな。例えばだが、ミアは親の敵、マリックは貴族の実家にそう育てられたから、だったかな。レックスは中級貴族出身だろ?わざわざここに来なくてもいいんじゃないのか。」

 レックスはどう言うか迷っていた。フェーリングで騎士になった事を。こんな事を言うのは気が引ける。
 とはいえ、仕事として今真面目に戦うのも事実。動機以外は立派なはずだ。
 両親も…。両親……。
 レックスの親も騎士になると聞いて喜んでいた。

レックス「帝国で産まれて、帝国の為に戦う。俺の産まれ故郷を壊されるのなんて嫌だろ?勿論不安はあるし、なんなら怖い。でも誰かはやらないといけないしな。」

シア「…高潔な動機だな。聞いといてなんだが、俺は親に言われたからだ。誇りのためにってね。とはいえ仕事として、使命として。俺も騎士として、精一杯戦う予定だ。」

 後半俺とほぼ同じこと言ってる。
 恥ずかし!

シア「そう言えばレックス。救護所には行ったのか?」

レックス「救護所?」

シア「そうだ。顔合わせはしといたほうがいいぞ。後々世話になるかもしれないしな。」

 そうなのか。なら救護所に行くか。

レックス「ありがとうシア。そういう助言は助かるよ。」


レックス「こんにちは。騎士隊のレックスです。」

救護職員「レックスさん?初めての方ですね。」

 もしあいつ(友達)なら大興奮しそうな女性が迎えてくれた。

ニーナ「あたしはニーナ。救護所で救護しています…ってそりゃそうか。よろしくねレックスさん!」

レックス「よろしくニーナさん。まぁよろしくはしないのが理想ですが。」

ニーナ「そうですね。最近は誇りだなんたらって自分の体を大切にしない人も増えてるんです。レックスさんはちゃんと機を見て撤退して下さいよ。治すのも大変ですし、何より不健全です!」

レックス「そりゃそうだな。」

ニーナ「まぁ挨拶くらいなら何時でもお待ちしていますね!」

レックス「わかりましたニーナさん。では。」

 救護所はニーナさんとの会話の間もあたふたとした雰囲気を感じた。
 救護所には世話にならないようにしよう。
 

  カンカンカン!

 鐘の音が基地を駆け巡る。
 慣れた手付きで鎧を着るレックス。何度目かになるウェーブの警告にも、驚かなくなっていた。

騎士長「”プライド”が来たぞ!」

 プライドとは、簡単に言えば動く鎧だ。鎧を攻撃しても何一つ反応しないが、奴らの持つ剣を曲げたり破壊したりすると、ガシャっと分裂して消える。
 不意打ちでの死亡例も多く、警戒すべき化け物だ。
 騎士隊と魔法部隊は広間に集まり、無事を確認する。

騎士長「準備は出来たな?我々は帝国の未来の為に、剣を掲げよ!進め!」

 騎士長の命令に従い、プライドの集団に近づく。
 途中で騎士長が旗を掲げて基地の方へ合図を送る。直ぐに基地から魔法による支援が入り、プライド達が散開した。