気づいた時には視線は声の方向へ。
遅咲きの桜の下で、美しい男子と女子。なんとも絵になる光景なこと。
でも聞こえてきたのはそんな景色とは真逆の発言である。なんてったって
『えっと、すみません。名前覚えるの苦手なんです』
そんなこと好きな人から言われたら膝から崩れ落ちる自信がある。下手したら泣く。
現に仙谷先輩と向かい合っている女の子は何も言わずに立ち尽くしている。
この学校に通っている女子は皆、仙谷冬也センサーが常に発動しているので
一瞬で仙谷先輩の場所を特定出来る。そこで見つける仙谷先輩はいつでも優しい顔をして友達と楽しそうに会話をしていて。
私は仙谷先輩は王子さま、そんな印象しか無かった。
そんな中初めて見てしまった少し残酷な仙谷先輩。
ギャップ、というのか。
そんな思考をぐるぐる回している間に女の子はペコっと頭を下げたら立ち去っていった。
その時見えた胸元につけた学年を表すブローチは青色。私と同じ1年生。
そこまでしっかりと見てしまったのだ。人の視線にも気付かずに。



