「でもなんだか親密そうなのはわかります」
「それはなんで?」
「だって仙谷さんの話のほとんどに八尋さん出てきますし。いとこだとか、はとこだとか、彼女だとか」
その一つの本当が混じってるけどね。
そんなことはわざわざ口には出さず図書委員の仕事を黙々とする。
「仙谷さんはかっこいいですか?」
「うん。こんなにかっこいい人今後会えないと思う」
最後の一冊を本棚に戻したら、チラリと時計を見る。
時刻は5時。
今からでも遊びには行ける時間。
「じゃあ帰るね。お疲れ様」
「はい、お疲れ様です」
にこにこ笑顔で後輩に手を振って、かばんを肩にかけようと持ちてに手をかけた時。
───ハッとした。
私、冬也と喧嘩してる。
私の中での大事件である事柄をいとも簡単に忘れていたことに驚いて
がばっ、と急に勢いよく立ち上がった。



