小さな恋の物語【短編集】


『ねえ、斗真(とうま)先輩って、彼女……いるか知ってる?』

 スマホの向こうで、サッカー部マネの柚月(ゆづき)の硬い声がする。


「さあ、どうだろ。聞いたことないけど」


 何でもない風を装ってさらっと返すと、ホッと安堵のため息が聞こえてくる。


『サッカー部はモテる』ってのは都市伝説なんかではなく、実際彼女持ちの先輩は多い。

 しかも彼女自慢をしたい人ばっかだから、誰が誰と付き合ってる、なんてことは一年の俺たちでも大体把握している。

 つまり俺が知らないってことは、斗真先輩には彼女がいない可能性が大ってことだ。


 サッカー部キャプテンで、エースストライカー。

 モテ要素満載なのに、そういやだいぶ意外な人がフリーなんだな。


『だったらさ、斗真先輩、あたしのこと、どう思ってると思う?』

「は? 知らねえけど……まあ、別に嫌ってはねえんじゃね?」

『そうじゃなくて! あたしのこと、ちょっとはいいなって思ってくれてるかなあってこと!』

「だから知らないって」

『じゃあ、今度それとな~く聞いてみてよ』

「は? んなの無理だって。俺、あんましゃべったことねえし」

『そんなこと言わないで。お願い!』


 スマホの向こうで土下座でもしてそうな勢いで頼み込まれ、うぐっと言葉を飲み込む。