小さな恋の物語【短編集】

「やっと颯太との約束が果たせるね」

「それは俺のセリフ。だいぶ待たせたな」

「ふふっ。本当だよ」


 昨年も一昨年も、市内の球場で一回戦負け。

 まあ、俺はギリベンチ入りしていたものの、出番はなかったんだけど。


「高校生になったら、吹部に入って颯太の応援に行くからね」


 小学校のときからずっとそう言っていた結衣は、宣言通り強豪と名高いうちの高校の吹部に初心者で入部した。

 多分、すごく大変だったと思う。

 文化部なのに走り込みはもちろん、筋トレも必須。

 それに、なかなか埋まらない経験者との技術の差。


 それでも、弱音ひとつ吐かず、今までずっとめちゃくちゃがんばってきたってこと、俺はちゃんと知っている。


 そんなヤツに、ヘタレな姿なんて見せられるわけがない。


「っし。元気出たから、ちょっと投げてくるわ」

「がんばれ、我が校のエース!」

「おう、しっかり見とけよ、俺の活躍」


 結衣に応援されてばかりじゃフェアじゃない。

 俺だってずっと結衣のことを応援してたんだってとこ、野球でちゃんと見せてやるからな。