小さな恋の物語【短編集】


「おつかれ」

「びっっっっくりしたあ」

 校舎の陰に座り込んで休憩中、首筋にヒヤッとしたものが当たり、思わずびくんっと小さく跳ねる。


「こんなに暑いのに、よく走るよねえ」

 ご近所さんで幼馴染の結衣が、手に持ったタオルでパタパタと自分の顔を仰ぐ。


「まあ、夏は体力勝負なとこあるからな」


「はい、差し入れ」と差し出されたキンキンに冷えたスポドリを「さんきゅ」と受け取ると、さっそく蓋を開け、ごくごくと喉を鳴らす。


「結衣たちもがんばってんな」


 音楽室の方からは、個人練習中と思われる吹部の楽器の音がひっきりなしに聞こえてくる。


「そりゃあね。コンクールが近いので」


 夏休み間近の昼休み中の学校内は、それぞれの大舞台に向けて活気に溢れている。


「でも、三回戦はちゃんと応援行くから」

「おう、楽しみにしてる」


 高校野球の応援の定番である吹部の演奏だけど、実はうちの市内の球場では禁止されているんだ。

 多分、街中だからっていうのが理由なんだと思うけど。


 二回戦まで勝ち抜けば、次は吹部の応援が来てくれる。

 それを胸に、今年はなんとかここまで勝ち進んできた。