小さな恋の物語【短編集】

 律と出会ったときのことは、正直覚えていない。

 だって、1歳から通ってた保育園からの縁なんだもん。

 それから小中高と、律とはずっとおんなじ学校に通っている。


 スポーツが得意で、明るくて、冗談を言ってみんなを笑わせることも、ケンカになりそうな場を上手に和ませることもできる律が、陰で何人もの女子から告白されてきたってことくらい、あたしだってよく知っている。

「俺、野球にしか興味ないから」って言って、全部断ってるってことも。


 あたしもきっと野球に負けちゃうと思うけど。

 それでも、多分大学は別々になっちゃうから。

 その前に、どうしてもあたしの気持ちを知ってほしくって。


 ほんと、バカだよね。負けるってわかってる試合を挑もうとしてるんだから。


「——ごめん、ウソ。俺、プレゼント探してる」

 さっきまでとは打って変わって硬い声で律が言う。


「へ⁉ あ、あー……そうなんだ。ふうん。律にもとうとうそんな相手ができたんだ。よかった、よかった。これで安心して律とは違う大学に行けるってもんよ」

 膨れあがってきた涙をぐっと堪えて笑みを浮かべてみせると、くるりと商品棚の方へと向き直る。


「あたしはもうちょっとここでウインドウショッピングしてるからさ。律は、さっさと彼女にプレゼント探してくれば?」

 律に背中を向けたまま、思わず冷たい言い方になっちゃた。


「いや、まだ彼女じゃねーし。でも、なにやったら喜ぶか全然わかんないからさ。探すの手伝ってほしいんだけど」

「ヤだよ。律の好きな人? の好みなんて知らないし」

「大丈夫だよ。日菜のほしいもんでいいから」

「ヤダ! あたしだったら絶対ヤだもん。知らない女が選んだものもらったって、絶対うれしくないから!」


 もうこれ以上失恋の傷口を抉らないでよ。

 律のバカ。