小さな恋の物語【短編集】

「え、どうしたの?」

 瀬戸君が戸惑いの声をあげる。


 気づいたらわたし、瀬戸君の手首をつかんでた。


「あ、ご、ごめんね。なんでもない」


 パッと手を離して笑ってごまかそうとしたんだけど、

「わからないとこでもあった?」

 と瀬戸君がわたしのプリントを覗き込んできた。


「だ、大丈夫!」

 本当は全然大丈夫じゃないけど、咄嗟にプリントを両手で隠して否定する。


 だって、あまりにできてなくて恥ずかしすぎるんだもん。


「そうじゃなくて…………えと……今度の試合、応援、行ってもいい?」


 消え入りそうな声でわたしが言うと、瀬戸君がビックリした表情を浮かべる。


「ご、ごめんね! なに言ってるんだろ、わたし。行かないから。大丈夫。試合、がんばってね」


 ぎこちなく笑ってみせるわたしのことを、瀬戸君がじっと見つめてくる。


「——今度の土曜の10時、Mアリーナでやるから。よかったら、応援来て」


 それだけ言うと、瀬戸君は先生にプリントを出して、教室を出ていった。