小さな恋の物語【短編集】

 もちろん瀬戸君にとってはアンラッキーとしか言えないんだろうけどね。

 多分、早く部活に行きたくてソワソワしているんじゃないかな。

「大会が近い」って教室でしゃべってたし。


 瀬戸君はバレー部だけど、他のバレー部員ほど背は高くない。

 セッターっていって、アタッカーにトスを上げる、チームの司令塔的ポジションなんだって。


 ……なんて知ったかぶりをしちゃったけど、わたし実はあんまりバレーボールに詳しくないんだよね。

 でも瀬戸君が試合に出るのなら、見に行ってみたいな——なんて思ってるけど、「どこであるの?」「何日の何時から?」なんて突然聞いたら、きっとなんだこいつって思われちゃうだろうし。


 それだけならまだいい。「邪魔しに来ないでよ」なんて迷惑そうな顔をされたら、きっと立ち直れなくなる。


 実はわたし、自分で言うのもなんだけど、ちょっと……いや、だいぶ派手めな女子グループにいて、普段は瀬戸君とは真逆のチャラい男子とつるんでることが多いんだよね。

 だから多分、瀬戸君からしたら「関わりたくない相手」って思われていてもおかしくないだろうなって思ってる。


 だから、これはわたしの一方的な片想いで、きっと一生この想いは届かない。


 でも、それでもいいんだ。瀬戸君の笑顔が遠くからでも見られるなら。


 ……って、ずっと思っていたんだけど。


 プリントをやり終えたっぽい瀬戸君が、荷物とプリントを持って立ち上がった瞬間——。