小さな恋の物語【短編集】

「言ったよ。保育園のとき、美空に『付き合って』って。そしたら美空、『いいよ』って即答してくれたから、俺、ずっとそうだって思ってて——」

「そんな小さいときのこと、覚えてるわけないじゃん!」

「でも俺はハッキリ覚えてる。だって、めっちゃ嬉しかったし。たしかに、おかしいなって思う瞬間がなかったわけじゃないけど……でも、何度も言うことじゃないと思ってたし。一回OKもらってるのにさ」

「そ、それは、そうかもだけど」


 でも、一度でも『俺たちって付き合ってるよね?』って確かめてくれてたら、こんなことにはならなかったのに!


 ……いや、交際が順調なうちは言わないか。

 こんなの、まんま別れる寸前の恋人の会話だ。


「え、じゃあ、付き合ってもないのに、今まで誕生日もクリスマスも、ずっと俺と過ごしてくれてたってこと?」

「そうだよ。だってわたし、彼氏なんてずっといなかったし。クリぼっちなんて寂しすぎるし、幼馴染でも、一緒に過ごしてくれるならいいやって思って」


 駿介が、ショックを受けたような顔をする。


 いやいや、ちょっと待って。

 だって、『好き』の一言はもちろん、ハグだってされたことないし、キスだってしたことないんだよ⁉

 そんなの、付き合ってるなんて思うわけないじゃん!

 今どきの小学生のお付き合いだって、そのくらい普通でしょ?


「そっか。……そう、だよな。そんなチビのときのことなんて、普通、覚えてる方がおかしいよな。っつーか、真に受ける俺もどうかしてたよな」

 自分に言い聞かせるようにして言って、駿介が何度か小さくうなずく。


「悪い! さっきのは聞かなかったことにして」