小さな恋の物語【短編集】

☆☆☆


 クリスマスディナーのあと、夜景の見える展望台へと移動したわたしたち。


「うわぁ、キレイ!」

 夜景なんか全然目に入っていなかったけど、はしゃいだ声を出す。


 だって、ムリにでも声を出していないと、緊張でおかしくなりそうだったから。


「あのさ、美空」


 緊張した声で駿介に呼びかけられた瞬間、すでに限界突破しそうだった心臓の鼓動がさらに速くなる。


「うん? なあに?」

 それでも必死に平静を装って駿介の方を見る。

「結婚しよ」

「…………へ?」

 瞬時に駿介の言葉が理解できず、数秒反芻したのち、おかしな声が出た。


 え……ちょっと待って。


「だってわたしたち、付き合ってない、よね? 交際ゼロ日で結婚って……」


 戸惑うわたしを見て、駿介はわたし以上に戸惑った表情を浮かべた。


「ちょっと待って。俺、ずっと美空と付き合ってるつもりだったんだけど」

「だって、そんなこと一度も言われてないし! だから、わたしずっと……」


『付き合おう』の言葉、本当はずっと待っていたのに。

 宙ぶらりんの関係で苦しくても、それでもいつだってわたしの隣にいてくれる駿介のこの言葉を、恐れながらもずっとずっと待ち続けていたのに。

 駿介は、わたしとずっと付き合ってるつもりでいた……?