仮面のアイドルの正体は、記憶を失った少年だった 「記憶を失った少年が、“仮面のアイドル”として生きる運命とは――?」

──カーテンの隙間から差し込む、やわらかな朝の光。
街の遠くでは鳥のさえずりが響き、静かで穏やかな時間が部屋を満たしていた。

優香はベッドの中でそっと体を起こし、隣に眠る蓮――いや、“宅麻大地”としての彼を見つめる。
少し寝癖のついた、明るいブラウンの髪が、朝の光を受けてやさしく揺れていた。

穏やかに上下する胸。
昨夜、心を重ねたそのぬくもりがまだ残っていて、
優香は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。

(……やっと、笑ってくれたんだね)
(どうか、この幸せが、ずっと続きますように)

小さな寝息が、静かにリズムを刻む。
そのたびに、優香の心も同じリズムで穏やかに波打つ。

(あの人が、安心して眠れてる……
 そのことが、こんなにも嬉しいなんて)

蓮が小さく身じろぎする。
「……ん……」

かすかな寝言とともに、まつげがわずかに震えた。
優香は思わず顔を近づけて、そっと微笑む。

「……おはよう、蓮くん」

ゆっくりと目が開き、朝の光を映す。
「……ん。……ここ……?」

「うちのベッドだよ。覚えてないの?」

「……あ、そっか。昨日……」

蓮の頬がうっすらと赤く染まる。
その照れたような表情に、優香の胸がくすぐられ、自然と笑みがこぼれた。

「朝ごはん、作るね。苦手じゃなければ……和食の気分なんだけど」

「……うん。食べる」

その素直な返事に、優香の心がいっそうあたたかく満たされる。
「ふふ……少し待っててね」

ベッドをそっと抜け出す優香の背を、蓮はぼんやりと見送る。
カーテンの隙間から差し込む光が、彼女の髪を淡く透かしていた。

外では街の音がゆっくりと重なり始め、キッチンからは食器が触れ合う小さな音。
だしの香りがふわりと漂い、蓮の胸に、あたたかな幸福が静かに広がっていく。

(……こんなふうに目覚める朝なんて、知らなかった)
(ぬくもりが残ってて、誰かがそばにいる――
 それだけで、こんなにも心が満たされるんだな)

(……もう少しだけ、この時間の中にいたい)
(優香のそばで、ちゃんと“俺”として笑っていたい)

蓮は静かに目を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。
朝の光がやわらかく広がり、ふたりの部屋を優しく包み込んでいく。

それは、長い夜を越えて初めて迎えた――
“愛の朝”。