仮面のアイドルの正体は、記憶を失った少年だった 「記憶を失った少年が、“仮面のアイドル”として生きる運命とは――?」

 優香の寝息が、ふと乱れる。
 「……ん……」
 身じろぎした彼女の眉が、閉じたまぶたの下で小さく寄った。

 「……まだ、いるよね……?」

 寝言のようで、それでも確かに――蓮に向けられた声だった。
 蓮は驚いたように彼女を見つめ、そっと息をのむ。

 そして、ためらいなく手を伸ばし、彼女の指先に自分の手を重ねた。

 「……いるよ。ちゃんと、ここにいる」

 その声に、優香の眉がほぐれ、安らいだように小さく息を吐く。

 「……よかった……どこにも、行かないでね……」

 その言葉が夢の中のものか現実か、蓮には分からなかった。
 けれど胸の奥が、じんわりと温かさに満たされていく。

(……そうだよな。俺は、ずっとひとりで、誰にも頼らずに戦ってきた。
 でも――もう、違うんだ)

 「行かないよ。もう……ひとりには、しないから」

 髪にそっと手を滑らせながら、蓮はやさしく囁いた。
 その声が届いたのかは分からない。

 けれど――優香の寝顔には、やわらかな微笑みが浮かんでいた。

 蓮は静かに彼女の隣に横たわる。
 肩が触れ合う距離に、確かなぬくもりがある。

(……誰かと眠る夜が、こんなにもあたたかいなんて――)

 優香の呼吸に合わせるように、蓮の瞳もゆっくりと閉じられていく。

 そして、夜が明けていく。
 新しい朝が、静かにふたりを待っていた。