独身最後の夜に

 あの頃⋯⋯登茂子にしつこく謝罪の手紙を送るのをやめたばかりの11月。
 いつものように新聞のお悔やみ欄をチェックしていた母が、
「ちょっと、千鶴!これ⋯⋯」
 そこには、信じ難い文言が載っていた。

【幸田登茂子さん 21日、交通事故で死去、15歳】

 いつか、登茂子が素敵な誰かに出会い、幸せになった暁には、私たちは、再び友達に戻れるかもしれない――心の底から望んでいた“その時”は、決して訪れることがなくなった。
 たとえ、私たちの雪解けは叶わなくても、登茂子の青春だけは奪われて欲しくなかった⋯⋯。

 もし、登茂子の死が避けられない運命だと知っていたら、私は恋を諦めても構わなかったのに⋯⋯今さら何を言っても不毛な話だ。

 静かに立ち上がると、墓地から暗い海を見つめた。
 昼間ならば、この高台から、いつか私と彼が幸せな時を過ごしていた防波堤がよく見えたことだろう。