独身最後の夜に

 最初は、あれほど後ろめたさで胸がいっぱいだったのに、きっとバレない、なんとかなると、高を括ってもいた。

「ねえねえ。4組の鈴木さん、松岡くんに告白して振られたんだって」
 唐突に、登茂子がそう言い出した時には、一瞬ヒヤリとしたが。
「登茂子⋯⋯告白するの?」
 恐る恐る聞いてみたところ、
「するとしたら、卒業式の時かな。やっぱり、今は受験勉強に専念したいし」
 登茂子は、普段こそ他愛ないバカ話ばかりしているが、私と違って成績優秀。
 ふと、優等生同士、私なんかよりも登茂子のほうが松岡くんとは釣り合うのでは⋯⋯?などとよぎったりもした。
 しかし、蓼食う虫も好き好きで、彼は一途に私のことだけを見ていてくれた。
 どうか、卒業までは、誰にも私たちのことを知られませんように⋯⋯そんな身勝手なことを思っていた私。
 松岡くんは、決して周りに気づかれぬよう、うまくやってくれた。