この学校の空気って、こんな感じだっけ。
席に着いた時、男子の集団が入ってきた。
その中には、山川君と、去年同じクラスだった人が2,3人いた。
「翠咲、覚えてないだろうから、自己紹介するね」
山川君が話しかけてきた。
「山川碧斗だよ。
翠咲は、僕のことを碧斗って呼んでたから、そう呼んでもらえると嬉しい」
碧斗
「碧斗…」
「うん。あおとだよ」
「全然覚えてないけど、懐かしい気がする。
この響き…覚えてる」
「っ」
山川君は、一瞬顔をゆがませた。
そして、顔をそむけた。
「っあ、りがとう」
泣いているみたいだった。
「ねぇ、碧斗。私たちは、どんな関係だった?」
「…親しかった、というべきかな」
なぜ、そんなに泣きそうなの?
なぜ、そんなにあいまいなの?
「そ、っか。じゃあ、思い出せるように頑張るね」
一瞬、うれしそうな、驚いた顔をした山川君。
じゃない、碧斗
だけど…
「無理に思い出そうとしなくていい。翠咲と会話できるだけでいい」
