隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました

 やりすぎは禁物。余計なおせっかい。だとわかっているのに、何をしてるんだろう。やっぱり帰ろうかな。と回れ右をしようとしたところで、一際小柄な女の子が門の中から出てきた。

 周りには目もくれず小走りで駅まで直行しようとしている様子だ。
 パッと前を立ち塞ぐと、びっくりした様子で顔を上げた。

 ああ、リアルムギちゃん……。
 その怯えた子鹿のような表情すら愛らしい。

「な……、何しに来たんですか?」と恐々と彼女が尋ねた。

 もちろん、彼女を愛でるため――ではない。

「ちょっと話がしたいんだけど、時間ある?」

 まるで聖女を呼び出す乙女ゲーの悪役令嬢的な誘い文句で鵲さんを誘う。
向かうは庭園が美しいティサロンではなく、駅近な昭和レトロ感満載の純喫茶だ。ガラスのサイフォンが並ぶカウンター奥のボックス席に腰を下ろした。

「話っていうのは、五百城くんのことなんだけど」

 単刀直入に話題に入る。
 鵲は、”五百城”という名前を耳にするだけでも気分が悪くなるのか、さっと、顔色を青ざめさせた。

「あのっ。……彼には関わらないって決めたんで。
 金輪際付き纏ったりしないし、これからも、あなたたちの邪魔しないんで。だから、私のことは放っておいてもらえます?」

「本当にそれでいいのかな?」と尋ねると鵲は拍子抜けしたように「え?」と小さく呟いた。

「ごめんだけど、鵲さんの過去の写真見せてもらった」

「ぎゃあーー!!  
 うあああ、死にたい、てか死ぬーーー!!」

 突然、鵲は発狂したように頭を抱え出した。クラッシックレコードが流れる店内で高音の悲鳴がアンティークガラスを震わせる。

「鵲さん、イメチェンしたんだね……。そのさ……、鵲さんは、五百城くんのためにファッションとかメイクとか、たくさん努力したんじゃないかなって思って。
 それって彼が好きだからだよね?
 それなのに、彼のこと、諦めていいの?」

 鵲は涙を大きな瞳にめいいっぱい溜めて私を睨みつけた。

 「諦めたくないに決まってるでしょ。
 どんだけ努力したと思ってんのよ……」

 完璧な麦くんの理想の彼女になって、絶対に好きって言わせてみせる。
 麦くんを独占するのは、あたし!

「あたし、頑張ったのに!!
 何であんたが彼女なのよ!」

「実は、五百城くんの彼女じゃないんだ。
 彼女だって、嘘ついたの」

 鵲さんは、何を言われたのかわからないと言った調子で「は?」と喉の奥から声を発する。大きな瞳を細めて侮蔑を交えた視線を隠すことなく私へと注いだ。
 
 「……なにそれ……」