隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました

 そんな峯岸の笑顔を見て、ぼんやりと、

「峯岸さんって、やっぱり勇者なんですね……」と呟いてしまった。
「勇者?」

 まるでそんな言葉を受け取るとは思わなかったように、彼は目を丸くさせる。

 彼のいう通りだ。今なら、まだムギちゃんがゲームの世界にいる間なら、きっとまだ修復はできる。完全にログアウトする前に、なんとしても仲直りしなくては!

「峯岸さん、すみません。今夜はここで失礼してもいいでしょうか?」

 と告げると、峯岸は、「早く会いに行ってください。その友達に」と、にこやかに見送ってくれた。
 やはり勇者峯岸何某。スライムだろうと温情に溢れている男だった。



***



 勇者が配車してくれたタクシーに乗り込み自宅マンションへ。
 こんな深夜に隣の部屋のチャイムを押すことになるとは……。
 ドキドキしつつチャイムを押した。廊下の蛍光灯がジリジリと音を立てるだけで、なんの反応もない。
 もう夜遅いから、きっと出ないかも。でも……。
 もう一度だけ……。

 チャイムを押そうとしたところで、扉が開いた。

「なん……ですか?」

 いつも以上に冷たい声が少し開いた扉越しに聞こえた。

「ムギちゃん……ごめんなさい!!!」

と頭を下げる。

「ムギちゃんのこと何も知らないのに、あんなこと言ってしまってめちゃくちゃ反省してます! ほんとおおにすみませんでした!!!」

 深夜の廊下に私の声がやまびこのように響き渡った。

「声……でかいです」