「そんなに吠えないでよ。
お利口さんなら、ここで回れ右して、お家に帰るのが正しいんじゃない?」
まるで悪役令嬢にでもなったかのような気分でセリフを吐いてみる。美少女は目に涙を溜めているのを見て、嘘をついている分、申し訳なさが込み上げる。世の悪役令嬢は、こんな気分でヒロインをいじめているのだろうか。
美少女を泣かせるのって、ちょっと……気持ちいい。
流石にこれぐらいいえば、諦める……はず。
美少女は拳を握りしめプルプルと小刻みに震えている。平手一回ぐらいは受けるだろうけど、ムギちゃんそっくりの美少女からの平手打ちなら、喜んで受けますともー!!!!
今にも右フックが繰り出しそうなほどに拳を握りしめる少女を見てワクワクしていると、隣にいた五百城が、
「そうなんですか?」
素っ頓狂な声をあげた。互いの顔を見合わせる。五百城の顔に困惑した表情が貼り付けられている。
「てっきり姉とか、親戚のおばさんとか言うのかと」
「親戚のおばさん?!」
五百城は理解できていない表情をする。
五百城の言葉に、逆にこちらの理解が追いつかない。まず親戚のおばさんとあんなハグするだろうか。
