同居人のムギの個別チャットに挨拶を打ち込むと、ポワンと猫耳の魔法少女のムギのアイコンが表示された。 
 ムギ:「お疲れ様です」

 プレイヤー名は、ムギ。 
 職業は氷化系魔法使い
 レベルは80帯のネコ科の獣人である。 
 私のアバターである烈火はレベル100帯なので、同居人特典であるレベル差のバフの恩恵をムギちゃんは常に得ている。故にインしたらいつも一緒にクエストするのがルーティンだ。

 今年で同居歴3年となるが、出会った時は、ムギちゃんはまだ高校生だった。
 そんな彼女のリアルは大学生。
 そんな理由もあってか、3年経っても彼女の敬語は抜けない。

 可愛いムギちゃんを溺愛するあまり、ついつい衣装やら限定エモートやらを定期的に贈って(ギフト)しまう。
 そのせいで常に金欠である。でもいい。リアルよりもゲームの世界で同居人と生きるこの時間が、何より幸せだから。

 「ムギちゃん。今どこにいるんだろ?」

 ムギのいる場所をマップで確認すると、自宅のなかだった。森の中でログアウトした烈火とは違って、ムギは必ず装備品の耐久値が回復できるベッドまで律儀に戻ってから、オフラインにする。

 まだ家の中にいるだろうと思い、家にワープして部屋の中を探し回っていると、またチャットがぴょんと跳ねた。

 ムギ:「庭の水棘草、成長度100%になってたので刈り取っていいですか?」
 
 彼女はいつもチャット派だ。