「が、頑張れー」
こそっと柱の陰から五百城を応援する。 すると、コロコロっと何かが足元に転がってきた。見ると、ピンク色の首がもぎ取られたクマのぬいぐるみらしき残骸だった。
悲惨な姿のくまが転がってきたせいで、つい悲鳴をあげてしまった。慌てて口を閉じた。が、五百城を殴りつける音が止まっていることに気づいた。恐る恐る柱の影から顔を覗かせる。すると、静まり返った中庭に立つ五百城たちがこちらへと視線を向けていることに気づいた。絹糸のように黒髪のボブヘアを揺らす美少女は、目一杯の不機嫌さを顔に貼り付けている。
はっきりとした目鼻立ちをしており、アイドルだと言われても納得してしまうほどに愛くるしい少女だ。
それに……美少女は、五百城のアバターのムギちゃんにそっくりだった。
アバタ―のムギちゃんそっくりの美少女が眉を寄せてこちらを見つめている。
「うーわ。美少女、声まで可愛いとか、神!」
つい興奮のままに発してしまう。しかし、そんなことを言っていられる雰囲気ではない。確実にこの美少女のことを「ムギちゃん」などと呼ぶ私を、変な人だと思っているはずだ。
さっと、首無しぬいぐるみを手に取り、彼女に向かい差し出す。
「ごめんなさい! 知り合いに似てると思っただけで。私のことは気にせず、存分に続きをしてください!」
そう言って、差し出した手のひらの上から頭のないぬいぐるみが消えるのを待った。しかし美少女は動く気配がない。
